営業商談の流れを「再現できる手順」にする方法|アポ前・当日・アポ後の進め方

商談の流れは覚えるものではなく、自分の行動手順として作るものであることを示したアイキャッチ画像 営業

営業商談の流れを調べ、7つのステップは一通り読んだ。それでも、次の商談で自分が何をすればいいかは決まらない。そんな状態でお困りではないでしょうか。手応えのある回とない回の差を説明できない方も多いはずです。

この記事では、商談を「当日のステップ」ではなく「アポ前・当日・アポ後を貫く行動手順」として捉え直す方法を解説します。読み終えたときには、次の商談で使う自分用の手順書の初版を書き始められます。

営業商談の流れは「アポ前・当日・アポ後」で捉える

営業商談の3区分と、そこに割く力の配分(アポ前70%・当日10%・アポ後20%)を示した図
商談は当日だけではない。力の配分はアポ前に7割

営業商談の流れは当日だけではない。3区分で捉え直す

商談の流れとは、当日の会話の順番だけを指すものではありません。アポ前・当日・アポ後の3区分で捉え直します。

商談は独立したイベントではなく、SNS発信や問い合わせのやりとりなど、それ以前のコミュニケーションの続きとして起こるからです。だから「アポは取れたが、その後どう振る舞えばいいか分からない」という詰まりは、当日の話し方を覚えても解けません。

なお商談とは受注に向けて条件をすり合わせる場で、情報共有が中心の打ち合わせとは目的が違います。

セールス道場の要件定義書・提案資料は、商談の設計思想を「アポ前70%・本番10%・アポ後20%」と定義しています。当日が全体の1割なら、見るべき場所は前後へ移ります。同事業を主宰するチョッキ氏は「抽象度を上げれば、アポ前の流れは集客の流れと同じ」とも述べています。

商談当日の基本フロー7ステップ(一般的な流れの確認)

まず、一般的な当日の流れを確認します。本記事が調査した上位10記事では、挨拶・アイスブレイク・ヒアリング・提案・クロージングが10件すべてに共通していました(懸念の解消は4件)。

ステップ当日やること
1 挨拶・名刺交換名乗り、立場を伝える
2 アイスブレイク場をほぐし、話せる状態に
3 ヒアリング現状・課題・希望を聞く
4 提案解決策と条件を示す
5 懸念の解消疑問・不安・反論に答える
6 クロージング決断を促し意思を確認
7 次アクションの確認次回日程と宿題を決める

懸念の解消について、チョッキ氏は「どうせ提案するんでしょう?」への返し方をこう紹介します。

「当たり前じゃないですか、それで飯を食っています。ただ、やるかやらないかはどちらでもいい。あなたが僕を選ぶのと同時に、僕もあなたを選んでいます」

商談は対等だと置き直す返し方です。

オンラインでリアクションが薄いときは、「リアクションが薄くて、話しづらいです」と自分の感情で伝える方法も挙げています。

この7ステップ自体は正しい流れです。ただし覚えても再現はできません。

準備に7割:商談は本番前に決まる

事前準備は「大事」ではなく「7割」という量の基準で持ちます。

先ほどの要件定義書・提案資料は、この配分とあわせて「商談は、本番前に決まる」と明記しています。

当日の中身についても、同資料は準備80%・自由度20%と置きます。何を話し何を見せるかに加えて、「何を話さないか」まで決めておく。完全な台本でも、完全なアドリブでもありません。

ただしこの配分は同事業が自社の設計思想として定義した数字であり、業界標準の統計ではありません。数値を目標にせず、「準備に当日より多くの時間を割く」という順序を採用してください。

事前準備は「自社→顧客→競合」の3C分析の順で回す

準備項目を毎回ゼロから考えないために、3C分析を決まった順番で回します。

3C(Company/Customer/Competitor)は本来、市場を捉えるフレームです。チョッキ氏はこれを商談プロセスを改善するフォーマットとして転用します。

順番は3段です。まず自社、つまり自分の商談の行動プロセスを書き出す。次に顧客、商談で得た良い反応・悪い反応をもとに自分の行動を直す。最後に競合、他社の動線に実際に入って良い流れを取り込み、もう一度直す。

同氏は競合分析を「記事を読むこと」ではなく「無料プレゼントに登録する、体験に申し込むなど、実際に相手の動線を通ること」だと言います。

準備の中身は、同事業の資料が挙げる設問例が使えます。

  • 相手がいま何に困っていて、なぜまだ実現していないのか
  • 決裁者は誰で、決裁の条件は何か
  • 想定される障壁と、次回に取りたい合意

3つを同時に進めず、1商談で1周だけ回すほうが改善点を切り分けられます。

当日は「時間配分」を先に決めて、その枠に行動を流し込む

当日は、何を話すかより先に時間の枠を決めます。商談の時間配分を設計してから、その枠に行動を流し込みます。

チョッキ氏は、セールストレーナーのブライアン・トレーシー氏が提唱する配分を紹介しています。信頼関係の構築40%/ニーズ把握30%/プレゼン・クロージング30%。なお原典であるトレーシー氏の著書『Sales Success』は提案20%と購買判断の確認10%を分けており、後半30%はその合算です。60分の商談なら次の形です。

区分比率60分の場合その枠でやること
信頼関係の構築40%24分自己紹介、相手の背景の把握
ニーズ把握30%18分事前に用意した問いを投げる
プレゼン・クロージング30%18分提案、懸念の解消、次の合意

要点は数字より順序です。枠を固定してから、その枠でやる行動を決めます。逆にすると話したいことが増え、配分が崩れます。

アイスブレイクも「何を話すか」ではなく、24分をどう使うかの設計として考えます。同氏は、この配分をAIに伝えて行動を洗い出す問いを出させ、口頭で答えて当日の流れを組み立てる運用も紹介しています。

商談の流れを毎回再現するための行動手順

1回で終わらせない商談設計。3回の商談と、その合間に渡す音声・動画を示した図
商談と商談の「あいだ」にも接触を置く

商談1回ごとに「目的」と「行動手順」を決める

商談の目的は、案件全体で1つ決めるものではなく、1回ごとに決めるものです。

1回ごとの目的が決まっていないと、2回目以降で「結局、今日は何をすればいいんだっけ」となります。提案に至らないまま会い続けることになる、とチョッキ氏は指摘します。

同氏の設計では、回次ごとの目的が固定されています。個別1回目はミッション・ビジョン・バリューを一緒に作る。継続1回目は事業の骨組みを設計し、提供内容を短く体験してもらう。継続2回目は道筋を示したうえで必ず有料の提案をする。

提案が通らないなら、その手前のプロセスを直します。提案というゴールを先に決めないと、その前段で何をするかは決まりません。

同氏は、当日やることを事前に動画や音声で予告する方法も挙げます。「次回はこれを一緒に作ります」と伝えてあるから、当日いきなり本題に入れる設計です。初回商談の流れが決まらないときは、初回で渡すものを1つに絞ることから始めてください。

商談は1回で終わらない:初回・2回目・3回目の設計

1回で完結する前提では、2回目に何をするかが決まりません。複数回を最初から設計します。

チョッキ氏の設計では、有料提案までに少なくとも3回、60分・90分・90分の商談を置き、間隔は1週間以内を目安にします。合計しても対面は約4時間で、その間に見込み客の関心は他へ移ります。

回次目的時間の目安商談外に渡すもの
個別1回目方向性を一緒に言語化60分次回テーマの予告音声
継続1回目骨組みの設計と体験の提供90分感想が返ってから動画
継続2回目道筋の提示と有料提案90分提案内容の確認資料

同氏は有料提案までの総接触時間を10時間に置きます。内訳は対面4時間+非対面6時間で、非対面分は合間に渡す音声・動画で埋めます。

渡す順序も決まっていて、必ず音声が先、動画は後です。音声は「ながら」で聞けるのに対し、動画は視聴のためだけに時間を使わせ、競合が Netflix や Amazon Prime になる、というのが同氏の説明です。音声に感想が返ってきたら、そこで初めて動画を渡します。

なお、ここで挙げた回数・時間はチョッキ氏の自己申告に基づく設計値であり、業界の平均値ではありません。

決めるのは「話す内容」ではなく行動手順(トークスクリプトを作らない)

商談マニュアルで決めるのは、話す内容ではなく行動の手順です。チョッキ氏は「トークスクリプトを作るのはやめろ」とはっきり述べています。

理由は2つです。台本を読み上げている人と話したい相手はいないこと。全文を決めると、相手の話に合わせる余白がなくなること。自己紹介も全文は決めず、伝えるポイントだけ決めます。

同氏が示す商談マニュアルの作り方は4ステップです。

  1. 商談で踏む手順を決める
  2. その手順どおりに商談をやる
  3. 全部録音する
  4. 録音から行動手順だけを抜き出してまとめる(整形はAIに任せてよい)

同氏はこの4行で「以上です」と言い切ります。話し方の正解を探さず、実際にやった行動を記録して型にする順序です。

同席していた受講者も、以前はトークスクリプトを大量に書き込んでいたと振り返ります。マニュアル化を台本づくりと捉えるほど使えなくなる例です。

録音は議事録にしてすぐ引き出せる場所に置き、相手とも共有します。「覚えさせようとするから商談が重くなる」と同氏は言います。ただしテレアポは例外で、台本が有効だと同氏も認めています。

商談後の振り返りで「どの工程を直すか」を特定する

商談の振り返りは感想を書くことではなく、直す工程を特定する作業です。

チョッキ氏は振り返りを2つに分けます。成約したときは「どうすればもっと感動してもらえたか」で手順を改善する。決まらなかったときは、どこで止まったかを特定して前後を直す。断られた理由は直接聞けないので、手順を遡って推定します。

同事業の提案資料は、商談後に整理する項目をこう定義しています。

整理する項目数の目安
商談の結果1
事前仮説との差分1
Good(うまくいった点)3
Bad(うまくいかなかった点)3
改善点10
センターピン1
行動の改善2
習慣の改善1

センターピンとは、そこが動けば他の課題も連鎖して動く一点です。改善点を10個出しても、次に試せるのは1つ。10個から1つを選ぶ工程を先に置きます。

ロールプレイングも同じで、60分の商談に60分かけず、直すと決めた5〜10分だけを反復します。深く考えた1件は次の似た顧客にも使える、というのが同資料の立場です。

コツを探すより、工程別の数字を見て直す場所を決める

営業商談のコツを1つずつ試すより、どの工程で落ちているかを数字で見て、直す場所を決めるほうが早く進みます。

チョッキ氏は「全解決系のコンテンツを信じるな。自分たちのものも含めて」と言います。単発のテクニックは互いに矛盾するからです。未完了を残せという話だけを信じれば何も完了しない、単純接触が効くからと商談を重ねてもクロージングには至らない、と例を挙げます。

だからテクニックは「自分の手順のどの行動に入れて実験するか」に変換して初めて価値になる、と同氏は言います。

数字の見方として、同氏は自身の経験則から逆算の例を挙げます。単価50万円で月100万円なら成約2件が必要で、その手前に有料提案5件、体験7件、初回商談15件が並びます。どの段の通過率が落ちているかで、直す工程が決まります。同事業の要件定義書が挙げる指標は、商談数/提案率/成約率/平均単価/入金までの日数などです。

なお同氏は自身の成約率を75%と自己申告しつつ、100%ではないと強調しています。これらは本人の申告値であり、業界平均でも、同じ数字が出る保証でもありません。

まとめ:営業商談の流れは、覚えるものではなく作るもの

商談を録音し、行動手順だけを抜き出して自分の手順書の初版にする4ステップを示した図
録音から行動手順を抜き出し、手順書の初版にする

営業商談の流れは、覚えて再現するものではなく、自分の行動手順として作るものです。

アポ前・当日・アポ後の3区分で捉え直す。準備に配分を決めて時間を割く。当日は時間の枠を先に固定する。商談後は直す工程を1つ特定する。

チョッキ氏が挙げたブレイクスルーの条件は、一言で「言語化」でした。手順が言語化されていれば見ながら進められ、考える余白ができて改善点にも気づけます。

商談マニュアルの作り方の第一歩は難しくありません。次の商談を1本録音し、実際にやった行動手順だけを書き出す。それが初版です。

同氏はセッションを「行動が点で終わりすぎ。全部を線にしてつなげろ」と締めています。

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